Report from USA

 5月12日、13日とボストンにてハーバード大学公衆衛生大学院主催の「グローバル・ヘルス研究の新しい方向」と題したセミナーに出席してきました。これは、20年前に「ヘルス研究委員会」が国際的なガイドラインを発表したことを記念したセミナーで、フレオ・フランク学部長と初代の武見プログラム主任教授であったリンカーン・チェン教授の尽力で開催されました。

 従来の純粋な医学研究のみならず保健・医療政策分野の研究の大切さを確認する場となりました。これは、多くの参加者が、各国の保健システム強化が重要であるとの共通認識が各国の政策立案者に共有されるようになってきたものの、特に途上国政府の政策立案能力が脆弱なために中々実際の政策決定が上手くいかないことを懸念しているからです。アフリカ南部では、例え中央政府が優れた保健医療計画を策定したとしても、地方政府の能力不足により政策を実行できないことがしょっちゅう起きます。地方政府の政策実行能力を強化するための政策研究も重要だという議論もありました。

 私は、政府の政策能力を強化するために官民の政策研究所等を設立する際に、それらのシンクタンクが政府から一定の独立性を確保することが重要であることを指摘しておきました。それは、政府側の立場から求められる研究テーマばかりが正しい政策研究の方向を示すとは限らないからです。フレオ・フランク学部長が、セミナーの総括にて私の指摘の重要さに同意する発言をしてくれました。

 

 5月14日早朝にボストンからニューヨークに移動し、日本国際交流センター、国連事務局、日本、ノルウェー等の国連代表部共催の「人間の安全保障と健康」に関するセミナーに出席しました。このセミナーは、4月6日に発表されたパン・キブン国連事務総長による初の「人間安全保障報告書」に合わせて開催されました。私は、JCIAの立場からこのセミナーを企画し、今年の1月にNYにて国連事務総長首席補佐官のロバート・オア氏とその基本方針につき協議していました。

 我が国は一貫して国連にて人間の安全保障アプローチの重要性を指摘してきましたが、概念がまだ曖昧であるとの批判もあり、今回は健康という具体的な課題を解決する際に実際にいかに有効であるかを示す内容としました。この一週間後に開催された国連総会でのこの報告書に関する公式パネル討論において、より多くの国々の代表が人間の安全保障アプローチにつき賛同してくれるための事前運動でもありました。各国代表を含め約150人ほどが参加してくれました。

 オア首席補佐官が事務総長報告書につき概要を説明し、基調報告は、初代武見プログラム主任教授のリンカーン・チェンとノルウェーのグローバルヘルス担当総理補佐官であるシグレン・モジュダル大使がしてくれました。

 一週間後の国連総会公式パネル討論の冒頭の事務総長発言は、我々の健康問題に着目した議論の内容を随分ととりいれたものとなっていました。

武見敬三